
皆さんは「高専」と呼ばれる教育機関が存在することをご存知でしょうか?
今でこそ、某高専系YouTuberや某呪術系アニメの登場で、この単語を聞く機会は増えたかもしれません。しかし、私が高専への進学を決めた2019年ごろは、周りの友人や大人に「高校どこにしたん?」と聞かれ答えても、ほとんどが知らないという状況でした。
そこで本記事では高専とは何か、話していこうと思います。
高専って?
まず、高専を知らない方に向けて簡潔に概要をまとめてみようと思います。
さらに詳しい内容が知りたい場合は、近くの高専に資料請求するか、文部科学省の「高等専門学校(高専)について」という資料を見ていただければわかると思います。
高専の歴史
高専とは、「高等専門学校」の略称で、高校と専門学校を組み合わせたような教育機関となっています。
1961年に制定された「高等専門学校設置法」という法律に基づき設立された、日本の工業技術者の養成を目的とした教育機関です。産業界の技術ニーズに応えるため、全国各地に設立され、その後も教育内容やカリキュラムの改革を重ね、現在では全国に58校の高専があります。最近では、約20年ぶりに新設された「神山丸ごと高専」が話題になっていました。
高専の教育課程
高専は本科(5年間)と専攻科(2年間)の2つの教育課程があります。
- 本科:高校3年間+大学1・2年に相当
- 専攻科:大学卒業(大学3・4年)に相当
私の体感では、本科を修了後に専攻科への進学割合としては、各学科15~20%ほどでした。
例年、進学と就職の割合は4:6ですが、各高専や年によって就職の方が多い場合もあります。
本科を卒業後には準学士が与えられ、企業によっては大学卒業(学士)と同等の扱いを受けられるケースもあります。
学べる分野(学科)
ほとんどの高専では、主に以下の5分野が設置されています。
- 機械工学科: 機械設計、製造技術、材料工学など、機械に関する広範な分野と技術をを身につける。。
- 電気・電子工学科: 電気回路、電子デバイス、通信技術、制御工学など、電気と電子に関連する技術をを身につける。
- 情報工学科: プログラミング、データベース、ネットワーク、ソフトウェア開発など、情報技術に関する分野の知識と技術を身につける。
- 化学工学科: 化学プロセス、化学反応工学、材料科学など、化学を応用した技術をを身につける。
- 建築学科: 建築設計、建築構造、建築環境工学など、建築に関する広範な知識と技術を身につける。
ここでは紹介程度にお話ししますが、これらの他にも「宇宙工学科」や「生物工学科」、授業が英語で行われている国際高専の「国際理工学科」や海事教育に特化した商船高専の「商船学科」などが存在します。
ほとんどの高専は国立で授業料が安く、寮が併設されているので、県外であっても自分の行きたい学科がある高専を選ぶことができます。
また、高専ごとに学科を選ぶタイミングが異なります。
私が通っていた高専の場合、受験する段階で学科まで選択しなければなりませんでしたが、低学年のうちは普通科のように学科は決まっておらず、2,3年生に進級するときに選択するという高専もあるようです。
その他にも、受験段階で学科は決めるが、低学年のうちは学科ごちゃ混ぜのクラスという高専もあるみたいなので、自分の行きたい高専はどのようなシステムになっているのかチェックしてみて下さい。
高専を志望するひと
中学校を卒業した後の進路としては、一般的に高校へ進学することがほとんどだと思いますが、”1~2%”と僅かながら「高専」を進学先とする人もいます。
このような選択する人に共通することに、
- 親が高専出身である
- 兄弟や友人が高専生、もしくは高専を目指している
が挙げられます。私の場合も親が高専出身だったので、その存在を中学生の段階で認知していました。もちろんこれらの理由以外にも「ゲームが好き」、「ものづくりが好き」といった理由で入学する人も多くいます。
高専を選ぶメリット・デメリット
– 高専を選ぶメリット –
- 高校生の年齢から専門分野の知識と技術を学べるので、社会に出たときに即戦力になる
- 就職率がほぼ100%で、大学生と比べると名の知れた大手企業に比較的入りやすい
- 大学受験がないので、自分がやりたいことに時間を割ける
- 夏休み・春休みが1ヶ月半ある
- 大学と比べて学費が安く、金銭面における負担が少ない
- 校則が緩く、自己管理がしっかりとできれば自由な学校生活を送れる
企業側から見て、「高専生は優秀」という認識があるようで、意外と簡単に大手企業に就職できちゃったりします。しかし、就職率100%といっても第一志望への就職率が100%ではないということに注意してください。
また、大学受験という大きなプレッシャーがないので、自分のしたいことに多く時間を割くことができます。長期休みも普通高校より長いので、資格の勉強をするもよし、留学に行くもよし。5年もあるので自分の将来についてしっかりと向き合うことができます。
その他にも、校則が緩く自由な校風であるのも特徴です。染色やピアス、私服登校もOKなので個性溢れる学生が多くいます。ただし、校則が緩いぶん、自己管理をしっかりしてメリハリをつけないと留年の危機に陥ってしまうので、注意が必要です。
– 高専を選ぶデメリット –
- 授業スピードが早く、レポート課題が1年生の頃から多く課される
- 赤点が60点で留年率が高い
- 工業系の分野から進路を変えにくい
- 女子の割合が著しく低い
高専はレポートの量が多いことで有名です。低学年のころから毎週のようにレポート課題が課せられ、週末はレポート地獄です。私の場合、低学年のころは「手書きのみ」という謎の縛りがあり、とても苦しんだ記憶があります。でも、早い段階からレポートを作成する習慣が身につくので、今はそれほどレポート作成を苦に感じません。
また、5年間みっちりと専門分野の勉強をするので、編入で文系の学部を選択することが難しいです。(※大学によっては経営学部などの文系学部への編入が可能です。)
留年率も全体の4%ほどで、留年してしまった人や途中でついていくのがしんどくなった人は、早い段階で学校を退学し、高卒認定試験を受けてから大学へ進学する人が多いです。入学してから「やっぱり高専は自分にあってないな」と感じたらそのような選択肢を考えてみても良いかも知れません。
⚠️高専の男女比は9:1なので普通高校のような青春をしたい人は、高専はあまりお勧めしません⚠️
高専卒の私が思う、高専という選択肢
結論、私は高専という選択肢は大いにありだと思います。個人的には、この5年間もっと自身を成長させられたなという後悔が勝ちますが、自分の将来について考える機会はとても多くありました。それが今の海外大学へ進学するという選択につながっているので、高専に通ってよかったと感じています。
正直、入学当初は特に工学に興味がなく、やりたい事も決まっていなかったのでとりあえず与えられた課題をこなす日々でした。
今この記事を読んでいるあなたは、少なくとも当時の私より優秀で、何かしら高専でやりたいことを見つけているはずです。入学後から自発的に行動すれば、可能性は無限大だと断言できるほど、あなたにぴったりな学校です!整った環境で、15歳という若さから専門的な技術を身につけられるのは高専しかありません!
さて、今回は自身の経験も混ぜながら、高専についての概要を簡単にまとめてみました。
これから受験を控えている中学生の皆さんに、「高専」という選択肢があるんだ!いうことを頭の片隅に少しでも留めてもらえたら嬉しいです。
今後も自身の高専で得た経験やロボコンなどの高専ならではの部活動、卒業後のキャリアパスについてなどの情報を発信していきたいと思っています。
もし、記事にして欲しい内容があればX(旧Twitter)のDMかお問い合わせにてお知らせください!